記事公開:2021年04月15日
編集長 伊嶋謙二
音楽では、グラミー賞でカントリーからポップに転向したテイラースイフトが、コロナ禍で、商業主義とは一線を画した、アコースティックな音楽、いわゆるオルタナミュージックというジャンルを強く印象付けた。まさに今までポップで売れるということ、多数であることを是としていたことが、ことさらにコロナ禍によって、多様化上等ということと相まって、個であること、そして個として行動することが重要視されていると感じた。そこがオルタナティブということとぴったりはまった。自分が選べることができる、そんな生き方がすんなり受け入れやすい時代かもしれない。
ひるがえって、働き方改革という意味(多少無理筋な展開だが)では、いままでオフィスに勤務するという従来の働き方に対して、テレワーク、リモートワーク、ノマドワークなどいろいろな表現、形態があるが確実に変わりつつある。そして今回提唱したいのが「オルタナ・ワーク」、つまり、定まった勤務先に集合的な働き方をすることから、自分で働く場所、働き方を選択できるような働き方だ。ワーケーションがその類義語でもある。
多くの人が休暇と働くことを合わせて、ワーケーションとしている(現に自分も秋田ワーケーション推進協会を立ち上げた)ことについては、反論はないが、むしろ休暇とかテレワークとかいう、直線的な用語の組み合わせで語るよりは、すべては個人が働くための基準を自ら選択できるという意味で言うところの、オルタナティブな考え方でみる、オルタナティブ・ワーク、オルタナ・ワークとして、これからのワーケーション規範を定めて行きたいと言うのが、今回の提案でもある。
なぜそう思ったかは、特に編集長の自分が秋田県仙北市を中心に活動していると、周りが(近隣のロケーションを)いわゆる観光地としていることから、旅行者、インバウンドで県外から人を呼び込むということが前提となっているフシがあると感じたからだ。そのためワーケーションという響きは、どちらかというと、旅行や観光ということが一義的に優先されて、ワークは「ついで」のような論調が目立つ。
何も休暇付きの仕事という順序にとらわれずに、むしろ仕事をする場所のスイッチの切り替えということで言えば、決まっている仕事場の仕切りを取っ払って、どこでも仕事とプライベートの切り替えができれば、いろいろと楽しいではないか?と、テレワーク歴20年の自分は確実に思う。
「いやいや、そうはいっても、会社の仕組みが」とか、「仕事の性質上難しい」とか「慣れていないので」など、否定的な見方ゆえに進んでいない人や企業が相当に多い。日本での終身雇用のあり方も変容しつつあるように、個人が1社に「就社」して、仕事人生を全うするということは、もはや崩れつつあり、パラレルワークや副業などの多様化がこれからもっと進むことは間違いないだろう。
そうなると会社勤め(?)という旧来の縛りから抜け出して、個人として仕事というものに向きあうことが、仕事だけでなく、生き方そのものとなり、家族としてどう過ごすか、生きるということにも向き合わざるを得ない。
バズワード的に言われているワーケーションは早晩すたれてきて、これからはより常態としての働き方はワーケーションであり、私が推奨している「オルタナ・ワーク」になることは想像に難くない。
ただし現実的にはオルタナ・ワークになるには、まだまだ一定程度の助走期間を要するであろうし、そしてコロナを抱えながら、しかしその速度を確実に速めることになるだろう。
オルタナ・ワークの3条件
しかしながらオルタナ・ワークを含む働き方改革というような多様化を多くが受け入れるためには、個人は、次の3つの課題を克服する、あるいは経験する必要がある。
1.生活と仕事の一体化
出勤する、職場で仕事する、終わって帰宅する、これらのタイミングはその都度電車に乗ったり、自席についたり、挨拶をしたりとかでスイッチのオンオフが明確であった。テレワーク、在宅ワーク、リモートワークなどの自ら選択した仕事の仕方は、いわば生活と仕事が一体となるオルタナ・ワークへの慣れは未経験であるがゆえに、意外に簡単ではない。
2.生活変容の自覚
決まった仕組みを受け入れるという受動型の働き方に慣れており、不満はあっても多くがそうであるということで従っていたが、オルタナ・ワークでは、自分が自分を律する必要がある。その自分を律する楽しさと難しさを自覚することが肝要だ。個人も会社も社会も。
3.生活変容の伝達
生活変容が定着するには、過渡期である働き方改革、オルタナ・ワークにおいて、受け身の仕事スタイルや生活ではなくなるため、周りに対しても、一定程度の理解と試用期間が必要になる。周りにも、つまり家族であり、その近い社会においても、変容したことを伝えながら、継続的に新たな生活スタイルを示し、周りを巻き込んで進むことになるからだ。
秋田の原稿を首都圏で書いている自分も、相当にパラレルワーク、多拠点生活を満喫している身であるため、今回の原稿は、近いうちに現実化することを予言的なメッセージとして、寄稿した。まあ間違いなく、と読者にはお伝えしたい。
さて、先日実施した秋田県内のワーケーションに関する調査もそろそろ結果が出ると思うが、今回提唱したオルタナ・ワークについての述べたことがらについて、どの程度働き方改革としての現状を表しているか、その結果が楽しみだ。
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